いなかの主婦よりもの申す

地方在住いち主婦の気になるニュース論

秀逸だったドラマ「俺の話は長い」


たまにはテレビドラマの話を。


ドラマを見なくなって久しいのですが、チラッと目にしたタイトルと大好きな原田美枝子さんが出演されるコメディというのが気になり、(おそらく)十年以上ぶりに最初から最後まで欠かさずに見ました。

と言っても録画ですが。


内容は淡々とした舞台風の会話劇で、キャストの雰囲気と役柄に違和感がなく、演技力の過不足も感じず、漂う空気感はとてもリアル。

現代家族が抱えるありがちな悩みや問題、悲哀などが根底にあるので泣ける場面も多かったのですが、「さあここで泣いて!」という押し付けがましさはなく、ドライなホームコメディという軸からは決してブレないので、笑いながら気持ち良く清々しく見ることが出来ました。

初回がつまらなかったら見るのはやめようと思っていたのですが、期待以上に面白かった。



主人公は31歳実家暮らしのニート

やりたいことを見出せず悶々とする気持ちはありながら、達者な弁舌で周囲を煙に巻き無職で居続ける姿は滑稽ながらも痛快でした。

でも彼のように快活でルックスも良く器用で、コミュニケーション能力に長け周囲に好かれるタイプの人は、本気を出しさえすればすぐにもニート生活を脱していきいき働けそうだよなぁ…と羨ましく感じられてガッツリ共感とまではいかなかったのですが、人知れず葛藤する姿には胸がじんとしました。


片や彼の実姉の再婚相手(義理の兄)という人は元バンドマンで、夢を諦め就職をするも向いておらず辞めてしまい、途中から主人公の彼同様に昼からこたつでダラダラする無職生活になるのですが、この人の年齢設定は分からないもののおそらくは就職氷河期世代。

不器用で何をやらせても下手くそで、底抜けにお人好しで人当たりは良いものの気が弱く損ばかりの性格、とにもかくにも世渡り下手という、何だか自分を見ているような気持ちにさせられるこちらのキャラクターに私は個人的に共感しまくりでした。


ニートの長男と勝手に仕事を辞めてしまう長女の夫…それに加えて長女の中学生の娘は不登校…と、家庭内の状況としてはなかなかハードなのですが、それでも家族同士諦めずに言いたいことを言ってちゃんとぶつかり合って、結果各々が少しずつ成長していくという愛のある関係性が描かれていました。


ドラマティックな出来事や急展開など皆無でも、日常風景と人間の心理を丁寧に、細やかに描写をしてみせればこんなに見応えのあるドラマに仕上がるのだと、ものづくりのシンプルな原点を示されたようで感慨深かったです。

もちろんそこには巧みな「見せる技術」が確かにありましたが。



優しい人ほど生きづらい今の時代、どの世代でもどんな立場でも大なり小なり悩みを抱え、歯を食いしばりながら、時には立ち止まりながらみんな毎日を耐えている。

だから日々の中の些細な物事、たとえば一回の食事であっても、家族や大切な人とちゃんと向き合って輪を作り、大事に味わって楽しく過ごして、互いを励まし合う力にして乗り越えて行こう。

そんな、作り手側から視聴者側へ向けた壮大な愛情さえ感じられました。

やっぱり上質なコメディは良い。


最近は、高評価ドラマが生まれるとすぐに類似品が多産されたり、準備不足のまま着手された劣化版続編なんかが出てきて、そのクオリティの低さやあさましいお金の匂いに視聴者が辟易させられる状況が生まれがちなようですが、作り手側の方々には良いコンテンツは大事にじっくりあたためていって欲しいです。

しかし原田美枝子さんはいくつになってもナチュラルにお美しい。



色々慌ただしく、年内の更新はおそらくこれで最後になろうかと思います。

お立ち寄り頂き、お読み頂きました方々、誠にありがとうございました。

どうか良いお年をお迎え下さいませ。


また年明けにお目にかかれますように。