いなかの主婦よりもの申す

地方在住いち主婦の気になるニュース論

昨今の田舎の病院事情


以前、地方の病院の医師やスタッフ不足の深刻さについて書きました。


「地方医師残業  上限年二千時間案」

https://bebera.hatenablog.com/entry/2019/01/12/192721


そちらでも少し触れたことですが、近頃自分的に「やはり」と思えることがあったので、備忘録として残しておこうと思います。



先日、うっかりして飼い猫に思いきり指を咬まれてしまいました。

その傷が結構な見た目でそこそこ出血もあったので、初めてのことで不安になったのもありすぐに病院へ。


定期的な検診などで通っている医療センターは時間外だったのですが、救急で診てもらえるかなーと淡い期待を胸に足を運ぶと、「担当科の先生がいない」という回答。

地元の人間じゃないのであまり道が分からないんですが…と総合受付の女性が申し訳なさそうに地図から別の病院を案内してくれるも、残念ながら私も地元の人間ではないのでイマイチ分からず。

この時間もやっているということだけお聞きして、後は地図アプリを頼りに向かうことにしました。


しかし、私は猫の咬み傷という比較的軽傷だったからそれで良いとしても、もっと重く緊急性の高い怪我人が急にやって来たらどうしたのでしょう?

明らかに重傷や重病なら誰かしらは対応して、「軽そう」なら傷の様子も確認することなくよそへまわすのでしょうか。

市内で一番大きい医療センターの時間外対応としては、何かあった時に不安だな…と思わせるに十分な内容でした。



スマホ片手にてくてく10分ほど歩き、何とか教えてもらった別の病院へ。

本当に歩ける距離なのか…と疑心暗鬼だったので、思いの外近くてホッと一安心。


外観は見るからに「代々やっている町の開業医」な雰囲気です。午後の中途半端な時間のせいか、待合にいるのは老婦人ひとり。受付後すぐに診察室に通されて、若めの先生が消毒、感染症予防の注射、薬の処方とスムーズに処置して下さいました。


帰り際「明日も来て下さい」とだけ言われ、特に予約についても説明がなかったので、翌日何も考えず開院時間に合わせて行ってみると…

そこには夥しい数のご老人が!

既存のベンチでは到底足らず、置かれた予備の椅子まで見事に埋まっています。


受付の方から、順番が来るまで1時間半位かかるので良ければお家で待機してもらって、時間になったらまた来て下さいと言ってもらい、ついでに「当日の予約だけは電話で出来ますので」と教えて頂いて、一旦家に帰りました。


私は正直驚きました。

歩ける距離に大きい医療センターがあるのに、

今日この時間はそちらも開いているのに、

お世辞にも新しいとも大きいとも言えないこの病院にこんなに沢山の患者さんが集まっているとは…と。


でも、その理由はすぐに分かったのです。


とりあえず来て受付で名前を書いて、待ってさえいれば必ず診てもらえて、しっかり話を聞いてくれて、ここでお薬まで出してもらえる。

厳密な完全予約制でもなく、いちいちロビーの機械にカードを入れて受付票を出す必要もなく、受付番号ではなく名前で呼んでもらえて、一方的に診察されてあっという間に終わることも、忘れそうなほど先の日にちの次回予約を取ることもなく、会計で順番待ちすることもなく、処方せん片手にわざわざ薬局まで行く手間もない。


要は、そういうことだろうと思うのです。


もちろんそれだけの人が集まるのは、先生方やスタッフの方々の技術やお人柄によるところが大きいのでしょうが(実際アットホームであたたかく、居心地が良い)、人が、特にお年を召した方が病院に求めるのは、最新設備でも最先端技術でもなく、昔から変わらない安心出来る環境なのだろうなと。


もちろん違う価値観の方もいるでしょうし、まして一概に大きな病院がダメということは決してない。

ただ、新しくて大きな病院があるから近隣の小さな病院は要らないということは絶対にないのだ、ということだけは確かだと思います。



自分の行きたい病院を選べるというのはとても恵まれています。

特に地方では、この先人口の減少と共にそうした選択肢も減っていってしまうのかも知れませんが、少しでも長くいい環境を維持していってもらいたいと思います。


そして傷が早く治りますように(現在も絶賛通院中)。