いなかの主婦よりもの申す

地方在住いち主婦の気になるニュース論

最低賃金「全国一律」化

この動きは与野党問わず出てきているとのこと、個人的にとても良いことだと思います。


東京などの大都市に暮らしている人からすれば「田舎暮らしの人間は生活費も安く済むはずなのに、一律化なんて必要なのか」と思うかも知れませんが、これは本当に大きな誤解であるということを声を大にして申し上げたいのです。


私は20年近くを東京で暮らし、その後地方(過疎化の進む本当の田舎)に来ましたが、引っ越してきてからこのかた物価が安いと思ったことは一度もなく、むしろチェーン店でない飲食店のランチ価格の高さに仰天したり、最寄り駅まで車で1時間というトンデモ物件の家賃の高さに言葉を失ったりと、「田舎暮らしは全然財布に優しくない」ことをこのたった数年で身をもって学ばされています。


スーパーで売っている物の値段は都心と全く同じ。家賃も同等(間取りや築年数だけをもって比較した場合。車がないと身動きが取れない場所ばかりという条件を加味すると超割高)。

税金も変わらず。

加えて車の維持費はかかる、外食単価もべらぼうに高い。


それなのに、何故か圧倒的に賃金だけは安いのです。

格差、格差と何かと声高に言われる昨今ですが、これも間違いなく大きな格差の一つでしょう。


都道府県ごとに設けられた最低時給だけではいまいちその酷さは伝わらないのですが、どのくらい違うかと言えば私が東京で時給1,500円程度を頂いてやっていた仕事と同等の仕事が、この田舎では時給1,000円に届きません。

田舎だから仕事がラクなんてことはないのです。質も量も変わらない(というかむしろ少ない人員でまわすので色々大変)のに賃金は低い。

それでモチベーションが上がろうはずがありません。


これなら初老の体に鞭打っていっそ東京まで出稼ぎに行こうかと、四十過ぎの人間が軽く本気で思うくらいなのですから、若者はそりゃ故郷など早々に見限ってみな東京に行くわなあ…としみじみ思うのです。


都会には田舎暮らしに憧れる人がけっこう多くいますが、実際に移住にまで至る人は少なく、定住となればその中の一握り。

現実の厳しさを知っているからこそ踏み切れない、または踏み切ってはみたもののあえなく撃沈してしまう、そんなところでしょう。


もちろん田舎にもいいところはあります。

空気が美味しいし、温泉はたくさんあるし、新鮮で味のいいお野菜や果物が手に入りやすかったり…


でも正直、それらは日々の活動に欠かせない要素ではありません。

まっとうな生活を営めるという基礎が成り立って初めて味わえる喜びです。

やさぐれた言い方をすれば、「いくら空気が美味かろうがそれで腹が膨れるわけでなし」、空気が悪かろうが人で溢れかえろうが、やっぱりそりゃ賃金が高い方がいいよなあと思ってしまうのは、このご時世では致し方ないのではないでしょうか。


わたしが今暮らす場所の最低時給は821円ですが、堂々とその最低時給金額を掲げた求人のいかに多いことか。

特にお役所関係、または関連する公共事業系の仕事はほぼ例外なく最低時給です。


人が足りないなら正規採用を増やせばいいものを、自分たちの給与を下げたくないばかりに足もとを見る低時給で非正規をこき使うという算段。


最低賃金の一律化を目指すと言うのであれば、まず一番に身内から何とかしてもらわないとなりませんね。

所謂「たくさん給料をもらってる」と言われる人たちが、自分たちの仕事を手伝って下さいという時に恥ずかしげもなく最低時給を提示しているようでは、情けなく目もあてられません。


どこに住んでいようが、単身だろうが大家族だろうが、生活していくのに最低限必要な一人当たりのお金の額というのは本当に変わりません。

なのでそもそも賃金に地域差がある、しかも「最低額」だけでなく「平均額」で見ると相当な開きがあるといった現状は、極めて健全ではないと言っていいと思います。


都市部の人口集中問題を何とか打開するためにも、地方の雇用と賃金の底上げは可及的速やかに行われるべきでしょう。