いなかの主婦よりもの申す

地方在住いち主婦の気になるニュース論

老後に備えるということ

あたかも浅はかな悪ガキが0点のテストをこっそり破り捨てて、「ない、もうない。だから0点なんか取ってない」と親に苦しい言い訳をする…のを見ているかのような香ばしい気持ちがしました。

与党お偉方の一連の、「例の(老後2000万円必要の)報告書をなかったことにするの巻」。


必死になればなるほど逆効果なのにも気付かないほど皆さん劣化されてるのでしょうか?

勇気を持って指摘できる若手の誰かはいないんですかね。無理か。


はるか以前からあれだけ「年金があぶない」と散々言われ続けてきて(いくら政府が事あるごとに大丈夫と嘯こうと)、もはやこの国の中に年金だけで老後の暮らしを満足なものに出来るなんて本気で思っている人はいないでしょう。


真っ当に老後のことを考える場合、年金とは別に自分で将来のための蓄えを用意しておく必要がある。

そんなことは誰しもが分かっているし、「ちゃんと備えておけ」とかわざわざ言われなくたって可能な限りコツコツ貯蓄に励んでいるんです。


しかし、です。

指針としていきなりウン千万単位の額を国から示されて「はいみんな頑張って」と言われて、「そうかよーし頑張るぞ」と前向きに捉えられる人が今この末期日本で果たしてどれだけいるか?

そんなの一定レベル以上の高所得者の方々だけでしょう。


一向に上がらない低い賃金でカツカツの日々を送る大多数の国民は、びっくりを通り越してガッカリしたわけです。

「えっそんなにお金がないと老後って生きられないの…?  貯蓄もないまま働けなくなったらいよいよ生活保護か死ぬかどっちかか…」


今回のことがある前から上記のように考えていた人も既に多かったはずではありますが、2000万という桁外れの金額を目の当たりにして、そんな風に人生を悲観する人の数はいよいよ膨れ上がったことでしょう。


国民一人ひとりが自分で老後の生活資金を作っておくなんて当たり前のことだ、今さら驚くとか文句を言うとかどうかしている、国が全部助けてくれると思うな的な冷静な論調も巷には見られるのですが、それらも将来的に全くお金に困ることはない高収入の方々からの俯瞰の視点なのかなあと感じてしまいます。


今回の世間の反応は、何も国が全部助けてくれると思っていたから騒いでいるという訳じゃないし、単純な驚きとか文句とかとも違うと思うのです。


急なんですよね。

頭で薄々分かっちゃいても、いざ目の前に現実を出されると気持ちがついていかないのです。


年金なんて私たちはどうせ貰えないよと常々口癖のように言ってはいても、それでも心のどこかでは自分たちの老後までどうにかもって欲しいと思っている。

ところが制度自体がもとうがもつまいが、2000万、何ならもっと貯蓄がないと到底老後は暮らせないと。

その展開が余りに急なんです。

国民の現状と心情からあまりに乖離している。


そしてそれに対する「じゃあどうすればいいか、そしてそもそも不可能な人はどうするか」といったフォローがある訳でもなく、挙げ句の果てには時期が悪いという手前勝手の為に「ウソウソ、間違いでした!」と情報自体を強引に抹殺しちゃう始末。


その必死さでウソな訳ないし、国が出してくる数字なんて大体ちょっと上方修正されてるんだから現実はきっともっと厳しいのだ…

と、結果的には国民が戦慄するに十分な寸劇になったので、荒療治とはいえ我々にとっては色々と考えさせられるきっかけとなり良かったのかも知れません。



ここからは消費増税をも控えて、今後は浮ついた出費なんか絶対するか! と国民のお財布はほぼ例外なくガッチリと閉まってしまいました。

これをこじ開けるのは並大抵のことではないので、意地でも「この国の景気は悪くない」と言い続けたいなら、お金に困らない政界財界の皆さんでどうぞせっせと消費活動に励まれて下さい。



来るべき老後に備える。

さも簡単なことのように言ってくれますが、毎月4〜5万の貯金なんてとてもままならない経済状況の人も多いし、国が勧めるニーサだかイデコだかも何が何やら小難しいし、そもそも株だの投資だのに馴染みがない人は手を出すことさえ躊躇します。


言うだけ言って「あとは自分で勉強するなり貯めるなりしてお金用意してね」で終わりでは、あまりにもやさしさが無さ過ぎやしませんか。


年金があれば老後は安泰と謳いながら、超高齢化に備えず超少子化にも歯止めを掛けられず、世代間格差も収入格差もどうにも出来ず、その安定性をたった数十年維持させる為の積極的な努力を怠った国には、それでも何ら責められるところはないのでしょうか?  

他力本願だと言われようが、私にはどうしてもそうは思えないのです。


本来なら限りなく自由で前途洋々たる若者たちが、常にお金と老後のことを考えて窮屈に生きなければならない国。

何とも生きづらい、息苦しいですね。